10数年前、「九星気学」の師匠に「運命とはどんなものでしょうか?」と尋ねたところ、ある本を読むようにご指導いただきました。
その本が松下幸之助著「人生談義」1999年( PHP研究所)でした。
松下幸之助翁も「九星気学」を活用して大きな自己実現を果たすことができた事は良く知られています。
「九星気学(きゅうせいきがく)」は東洋哲学として「安心立命(あんしんりつめい)」「修身齋家(しゅうしんさいか)」を説き、松下幸之助翁の理念とも一致していたのかもしれませんね。
そこには運命について興味深い記事があったことを覚えています。
今回は、松下幸之助翁の「運命というもの」について引用を交えてお伝えしますね。
松下幸之助著「人生談義」1999年, PHP研究所からの引用です。
(引用始まり)
「運命というもの」
お正月を迎えるのも、九十三回目となりますな。
ぼくは生まれつき蒲柳(ほ りゅう)の質(たち)でしてね。
長じても医者の手をわずらわすことが多く、こんなにまで長生きできるとは思いもしませんでした。
ほんとにありがたいこと です。
これにはやはり、自分の意思や力を越えた運命とでも呼ぶしかない大きな力の働きを感ぜずにはいられませんね。
「自分には運がある。」
ぼくは運のいい人間だと思いますよ。
電灯会社へ入る前に、セメント会社の臨時雇いとして働いたことがあった んです。
トロッコを押したり、セメント袋を運んだりしましてね。
仕事に行くのに築港から埋め立て地まで船で通ったんですが、あるとき、 船べりに腰をかけていたら、そばを通った船員が足をすべらして海へ落ちたんです。
そのとき、船員が抱きついたもんだから、ぼくも一緒に落ちてしまった。
ぼくは泳ぎはあんまり知らないけれど、浮くぐらいはできる。
二、三メートル 沈んで浮かびあがると、船はずいぶん先まで行ってしまっている。
無我夢中に なって手足をバタバタしていたら、船がずーっと戻ってきて、二、三分後に引 きあげてくれたんですわ。
夏だったからよかったけれど、もし冬だったら死ん でいたでしょうな。
それから、独立して商売を始めたばかりの頃、よく自転車に製品を積んで 配達にまわっていました。
ある日、四辻で急に自動車が飛び出してきて、ぼくは自転車ごと突き飛ばされてしまった。
飛ばされたところが電車道です。
積ん だ荷物は散らばるし、自転車はグシャグシャ。
そこへ電車が来たのですが、二 メートル手前で止まってくれた。
``やられた''と思ってそろそろ立ち上がって みると、全く不思議、かすり傷一つないんです。
あれだけ強くぶつかったのにと、自分でも信じられませんでした。
不思議なもんですね。
だからぼくは、海で助かったときも交通事故にあっ たときも、``自分には運がある''と思いましたね。
そして「運があるなら、ことに処して自分はある程度のことはできるぞ」というように何げなく考えたのです。
つまり、仕事をする上でいろいろむずかしい問題が出てきますね。
そんなときでも、自分は運が強いのだから、何とかやり遂げられるだろう、といっ た信念を持つようになったのです。
これも、海に落ちたり、自動車にぶつかったりしたことを不運だと思わず、運がよかったと考えたからでしょうね。
「努力と運命」
運は努力によって生み出すもの、と言う人がいますね。
そういう見方も大事だとは思いますが、運があるからこういう成果があがったのだという見方も非常に大事だと思いますよ。
つまり成功して順調にいっているときは運がいいのだと思い、困難なときは自分のやり方がまずいからだと考える。
そういう考え方をした方が自分を御していく上において楽ではないか、とこう思うんです。
人間というものはともすれば、うまくいったら自分の腕でやったと思いが ちですね。
それがおごりに通じる。それでは具合が悪い。
だからうまくいった のは自分の運がよかったのだと考えたらいいし、また事がうまくいかないときは運がないと思わず、腕がないと思う。
そうすれば、自分の腕を上げなければ なければならないと考えますわな。
ぼくも幸いにして成功した部類に入るかもしれませんが、これは自分の力 ではない。
「運」のおかげである。
「自分も努力をしたけれど、その努力はせいぜい一割か二割で、大部分は「運」のおかげである。」
そう考えて、あんまりえらそうなことを言ったらあかんと、こう思っているのですよ。
ただね、そのときどきでは懸命にやってきた。
いま考えても「よくやった な」と自分で自分の頭をなでてやりたい気持ちになれる。
それが自分にとって幸せなことだと思いますね。
「運の強い人を選ぶ」
PHP研究所編「松下幸之助の見方・考え方」2007年, PHP研究所からの引用 です。
(引用始まり)
運のない人は、死なんでもいいときに死んでみたりする。
なんぼ追いつめ られても、徳川家康のように流れダマがそれて死なん人もいる。
人為ではどうしようもない、もって生まれたものですな。
「ぼくは、二人のうち一人を雇おうとする場合、学力、人格に甲乙つけがたいときは、履歴書などを参考にして、運の強い人を選びますな。」
「運のいい社員」は流れダマに当たらないし、会社にも運が向いてくるわけですよ。
(「中日新聞」昭和四十八年十月十六日)(引用終わり)
いかがでしたか。
「運」に関する考え方はいろいろあるとは思います。
迷信として自分の思うままに生きていくのも人生でしょう。
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